判例解説
【弁護士による判例解説】「相続欠格と代襲相続」
1.相続欠格とは 民法891条に定められた以下の5つの事由に該当した場合、相続人は、相続人の資格を失います。これを相続欠格といいます。 ① 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたた…
【弁護士による判例解説】「死亡に伴う公的給付と相続放棄」
人が死亡すると,各種公的な給付金の受取りについて,相続人に案内が届くことがあります。こうした給付金を受け取っても相続放棄を行えるのか,ご説明します。 1 法定単純承認(民法921条1号本文) 相続人が「相続財産の全部又は一部を処分した」場合…
【弁護士による判例解説】「成年被後見人の遺言」 名古屋高等裁判所平成9年5月28日判決
認知症等によって認知機能が低下し、事理弁識能力を常に欠く状態となった場合、親族等の請求によって、家庭裁判所による後見の審判を受けます(民法7条)。 原則として、15歳以上の者であれば遺言することができますが(民法961条)、成年被後見人が遺…
【弁護士による判例解説】「遺産分割の代償金の支払を分割にすることが出来るか。」 神戸家裁尼崎支部昭和48年7月31日審判 福岡高裁昭和40年5月6日決定
1 代償金が払えない。 「遺産の中に不動産は多く残っているが、現金が少ない。」という状態は、相続問題において非常に多くみられる現象です。遺産の中に現金が少ないと、土地を相続人間で分割することになり、土地ごとに価額が大きく違う場合には、法定相…
【弁護士による判例解説】「相続放棄と単純承認」
1.法定単純承認事由 相続人が相続財産の「処分」をしたときには、相続を単純承認したものとみなされることから(民法921条1号)、相続放棄ができなくなります。 また、相続放棄をした後であっても、相続財産を「隠匿」したり、「私にこれを費用」した…
【弁護士による判例解説】「被相続人の土地の無償使用と特別受益」 東京地裁平成15年11月17日判決
今回は、被相続人の土地を相続人の1人が無償使用している場合に、それが特別受益として考慮されるのかご説明します。 1 事案の概要 本判決の事案を簡略化して説明すると、被相続人Aが亡くなり、Aは遺言で、妻と3人の子らのそれぞれに遺産を分け与えま…
【弁護士による判例解説】遺言執行者の通知義務(東京地裁平成19年12月3日判決)
遺言の内容を実現するため、遺言によって遺言執行者が指定され、また、家庭裁判所によって遺言執行者が選任されることがあります。 遺言執行者の権利義務については、令和元年7月1日に施行された改正民法1012条1項では、「遺言執行者は、遺言の内容を…
【弁護士による判例解説】「自筆証書遺言の要件を満たさず無効な遺言が死因贈与契約の証拠となるか。」
自筆証書遺言は、法律の専門家のアドバイスなく作成されることが多い遺言です。 そのため、無効とされるケースがあるのですが、遺言能力ではなく、例えば、遺言書の形式的な面(押印がないことや自書等の要件)で無効となった場合には死因贈与契約の証拠の一…
【弁護士による判例解説】「再転相続と特別受益」 最高裁平成17年10月11日決定
今回は、遺産分割が未了の段階で、更に相続が発生した場合の、特別受益の取扱いに関する判例をご紹介します。 1 特別受益の持ち戻しとは 相続人が、生前に被相続人から受けた利益を、遺産の前渡しと評価し、これを遺産に組み入れることを特別受益の持ち戻…
【弁護士による判例解説】法定単純承認になる「相続財産の処分」(大阪高裁平成14年7月3日判決等)
相続人が、相続財産の全部又は一部を処分したとき、その相続人は、単純承認したものとみなされます(民法921条1項)。 その主たる理由は、本来、相続財産の処分は相続人が単純承認していなければ行ってはならないことであるから、これにより黙示の単純承…