法定相続人なのに無視?相続回復請求権について

代表弁護士 多湖 翔 (たこ つばさ)
多湖総合法律事務所
所属 / 神奈川県弁護士会 (登録番号46487)

法定相続人であるにも関わらず、無視されて遺産分割協議などが勝手に行われている場合、それは有効な遺産分割協議とは言えません。

こういった場合、相続権を侵害された方は、「相続回復請求権」行使することが認められています。相続回復請求権の行使によって、すでに分割されてしまった後でも、自身への相続財産を求めることが可能です。

ただし、相続回復請求権には、侵害を知ったときから5年間、侵害を知らなかったとしても、相続開始(被相続人が亡くなった日)から20年が経過すると行使できなくなります。

今回は、この相続回復請求権について詳しくご説明していきます。

そもそも相続権の侵害とは?

では、そもそも相続権の侵害とはどういった状況を言うのでしょうか?

実務上よくあるケースとしては、被相続人の死亡自体を知らなかった場合、または、自身が相続人であることに気付いていなかった場合などです。数年後に気付いた場合は、すでに遺産分割協議がなされ、他の相続人のもとに相続財産が流れてしまっている可能性が十分にあり得ます。こういった場合は、まさに相続権を侵害されていると言える状況です。

その他にも、相続権が失っている方(相続欠格や相続廃除など)が勝手に遺産を相続している場合も相続権の侵害が発生していると言えます。こうした状況下であれば、相続権を侵害されている相続人は、侵害している相続人に対して相続回復請求権を行使することが可能となります。

請求権者の立場からの相続回復請求

相続回復請求権が行使できるのは、本来の相続人(真正相続人といいます)は当然ですが、相続分の譲渡を受けた方、その他にも、包括承継人も含まれます。

包括承継人というのは、遺言書どおりに財産が移行されるよう遺産分割を進行する遺言執行者や、被相続人の相続人が判明しない場合に家庭裁判所から選任される相続財産管理人などのことです。

なお、勘違いされやすいのが、個別に相続財産を譲り受けた方(特定承継人といいます)は、相続回復請求権は持っていません。

例えば、特定の不動産だけを相続人以外の立場の方で遺贈された方、というのは特定承継人に該当するため相続回復請求権がそもそもありません。それにも関わらず、遺贈分を侵害されていた場合は、相続回復請求権の行使という方法ではなく、損害賠償請求や、不当利得返還請求といった手続きにて請求を図ることになっています。

相続回復請求権を請求される側

相続回復請求権を請求される側は、相続権を侵害した方といえますが、民法の条文上、請求される側について明確な記載がなされていません。それゆえ、多数の見解が生じています。

まず、表見相続人について見ていきましょう。表見相続人とは、相続廃除・相続欠格された方、事実と異なる出生届けや認知届により被相続人の子となった方、法的効力を有していない(家庭裁判所の認可を受けていない)養子縁組、などを指しています。

いずれの方も、一見すると相続人を装うことが可能ですが、現実には真正相続人の立場にありません。表見相続人は、本来の相続人でないにも関わらず、自身の相続権を主張し、本来の相続人の権利を侵害しているのです。

過去にも、すでに生前に被相続人から相続廃除されていた方が、自身の相続権を主張し、本来の相続人の権利を侵害、裁判にまで発展したケースも過去にはあります。

その他の共同相続人が侵害するケース

上記以外にも、その他の共同相続人が相続権を侵害するケースも見受けられます。

共同相続人ということは、表見相続人ではなく本来の相続人、つまりは真正相続人の立場となります。その中の1人、もしくは数人が、特定の相手に対して真実の遺産額を伝えず、本来得られるはずの相続分を侵害しているというケースです。

原則的に遺産分割が成立する前段階では、不動産は相続人全員の共有持ち分となります(登記の有無に関わらず)。言い方を変えれば、相続人の1人が他の相続人の権利を勝手に侵害することはできません。

しかし、単独で相続財産を占有している場合は、相続回復請求権の対象となります。

相続回復請求権の時効について

これまで相続財産の侵害とその回復請求権について見てきましたが、いつどのタイミングであっても請求できるわけではない、という点については冒頭で触れました。

ただし、ここで注意したいのが相続回復請求権を侵害している側が時効援用をする場合、その請求者が相続人であることを知らなかった場合は、善意・無過失を証明する必要があります。善意というのは、その事実を知らなかったということです。無過失というのは、その点において落ち度がなかったということです。

一方で、悪意があった場合(今回のケースでは相続権の侵害を知っていた場合)は、時効援用は認められず、再度の遺産分割協議によって解決すべきと解釈されています。

このように、相続回復請求権の行使については一般の方にとっては少し理解が難しく、お困りの方もいらっしゃるのが現実です。実務上、かなり稀なケースではありますが、相続回復請求権の行使についてお悩みの方は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

 

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