遺産分割調停・審判の流れと有利に進める方法  

代表弁護士 多湖 翔 (たこ つばさ)
多湖総合法律事務所
所属 / 神奈川県弁護士会 (登録番号46487)

遺産分割協議は、相続人の人数や関係性などによって、うまく進むかどうかが大きく左右されます。

例えば、もともと相続人同士の仲が良くない、遠方にいる、疎遠であるなどといった理由がある場合、なかなか遺産分割協議の進展が見込めなくなります。

しかし、遺産分割協議が終了しなければ不動産の名義変更などができず、いつまで経っても財産を手元に置くことはできません。

もし、どうしても遺産分割協議がまとめられないといった場合は、家庭裁判所にて行われる「遺産分割調停」の申立てを検討しましょう。遺産分割調停では、裁判所から委託を受けている調停委員と裁判官が話し合いに立ち会ってくれるため、話が進展する可能性があります。

また、有識者である第三者を交えることで、相続人同士も冷静に話し合いができるようになるメリットがあります。調停がどうしても成立しなかった場合は、裁判官が判断を下す「遺産分割審判」という手続きへと移行します。

いつまでも進まない話し合いを強制的に終了してもらえる点は、考え方次第ではメリットと言えるでしょう。

そこで今回は、この遺産分割調停と審判の流れと、少しでも有利に進めるために知っておくと良い知識について触れていきます。

遺産分割調停の流れ

1、裁判所への申立

遺産分割調停は、調停を求める側(申立人)ではなく、相手方が出てきやすいように、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。

ただし、事前に相続人同士で管轄となる裁判所を取り決めることができますので、相続人全員で遺産分割調停を計画しているのであれば、全員が参加しやすい家庭裁判所を管轄に指定すると良いでしょう。

申立自体はそれほど難しくはなく、家庭裁判所に備え付けられている申立の書式を一通り記載し、戸籍謄本など、指定された書類と一緒に提出します。

2、調停期日への参加

申立後は、申立人と家庭裁判所で第一回の調停期日を調整し、各相続人に呼び出し状が発送されます。期日当日は、裁判所によっても若干の運用が異なるのですが、一般的には調停委員のいる部屋に相続人が個別に呼び出され、各々が希望する遺産分割についての考えを伝えることになります。調停委員は相続人全員からの意見を聴き、あくまでも中立な立場から意見を出してくれます。

また、相続人同士の関係性によって、全員同席で調停手続きが進められます。なお、通常この調停期日は1~2時間程度が想定されていますが、多くの場合1回で合意になるケースはありません。1回で合意になるのであれば、調停を申し立てるほど揉めてはいないからです。

したがって、調停自体は複数回開かれることになるため、最後に次回期日の調整を全員で行い、その日の調停は終了します。

3、調停の成立・不成立

実は調停が開かれる回数に法律上の決まりはありません。話し合いがなかなか進展しなければ半年以上、中には1年以上かかるケースもあります。

しかし、調停委員側としても、いつまでも進展のない調停を続けることはしません。話し合いによる解決がもはや不可能と判断された時点で、調停は不成立となります。

一方で、話し合いが無事に進行し、相続人全員が納得できた場合、調停は成立となり、それを書面化した「調停調書」が裁判所から作成されます。

相続人は、この調停調書に基づいた遺産分割をすることになり、遺産分割調停は無事に終了となります。

4、審判手続きへの移行

調停が不成立になってしまった場合、手続きは審判へと移行します。審判は調停と違って、話し合いをする機会は原則として与えられません。

とはいえ、何か考えが変わったのであれば、書面にて自らの主張をすることは可能です。裁判官はこれまでの調停の経緯、調停委員からの意見、審判移行後の相続人からの主張書面を総合的に判断し、最終的な結論を出します。

ただし、一般的に裁判官が出す結論というのは、法定相続分に則ったものがほとんどです。相続人全員が納得できる審判結果になることは稀と言えるでしょう。

遺産分割調停・審判を有利に進めたい方へ

遺産分割調停・審判を有利に進めたい場合は、以下の点に気を配るようにしましょう。

1、調停委員を味方につける

調停委員は原則的にいずれかの相続人に肩入れすることがあってはなりません。あくまでも中立な立場から意見・進行をするのが職務です。

しかし、調停委員も人である以上、情が湧いてしまうことは少なからずありますし、好き嫌いも当然ながらあります。そこで、調停を有利に進めたいのであれば、調停委員には極力嫌われないようにし、味方になってもらうことを意識しましょう。

2、主張したいことは主張する

遺産分割調停においては、自らの意見を主張しないでいると、相手の意見を中心に進められることになってしまいます。これを避けるためにも、言いたいことはしっかりと主張しましょう。

ただし、あまり感情的になってしまうのは調停委員からの印象が悪くなってしまいます。

3、一歩引き下がることも重要

自分の言いたいことを主張するだけでは、いつまで経っても解決に至りません。時には、一歩引き下がることも重要です。

この姿勢が調停委員に評価され、自らの意見を取り持ってくれることもありますので、主張するだけが有利に進めるコツではありません。

4、審判への移行は極力避ける

上記でも触れたように、調停が審判へと移行してしまうと、その多くの場合が法定相続分による分割となるケースがほとんどです。

これを避けるためにも、審判への移行は極力避けましょう。遺産分割調停は、話し合いで解決させることに非常に価値があります。

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