遺産分割協議書を作成すべき理由と注意点について 

代表弁護士 多湖 翔 (たこ つばさ)
多湖総合法律事務所
所属 / 神奈川県弁護士会 (登録番号46487)

今回は、遺産分割協議書の作成と注意点について詳しく見ていきましょう。

相続が発生すると、被相続人の遺産は相続人に相続されることになります。

しかし、遺言書がある場合は、その遺言書が優先されます。一方で、遺言書が見つからなかった場合、または、遺言書が見つかったとしても、すべての相続財産についての記載されていなければ、相続人は遺産分割協議によって、遺産の行方を決めなければなりません。

なお、預貯金は遺産分割協議前であってもご自身の法定相続分に限って引き出すことが可能となる法改正が近年おこなわれました。

この遺産分割協議は、原則として相続人全員が参加しなければなりません。とはいえ、遠方に相続人がいるなどの特別な事情がある場合、協議内容への合意さえあれば、わざわざ全員揃っての話し合いまでは必須ではありません。

ただし、協議内容については口頭だけのやり取りで済まさずに、「遺産分割協議書」という形で書面化しておくのが後のトラブル防止に役立ちます。

なぜ遺産分割協議書を作成するのか

遺産分割協議書を作成する理由の一つとして、紛争の予防、遺産分割後のトラブルの予防が挙げられます。上記の通り、遺産分割協議は相続人全員参加が条件であるため、話し合いが終わった時点で、相続人全員が内容に合意しているのが当然です。

ところが、自身に不利な内容であるなどの理由で、後になってから「そんな合意は身に覚えがない」と協議自体に反論が生まれる可能性があります。こうしたトラブルを防止する目的で、遺産分割協議書が作成されます。

もう一つの理由としては、相続における各種手続きに利用するためということが挙げられます。

例えば、不動産の所有権移転登記を申請する際、遺産分割協議書の添付はほぼ必須となっています。また、預貯金の名義変更をする場合も、金融機関側に遺産分割協議書の添付を求められることもあります。

こうした各種相続手続きの際に遺産分割協議書があるだけでスムーズに進められますから、決まった内容については必ず書面化するようにしてください。

遺産分割協議書の作成と注意点

では、具体的な遺産分割協議書の作成についてみていきましょう。

まず、注意すべき点は、当事者のみが理解できる内容では、遺産分割協議書として各種手続きに利用できる効力を備えていないものになることです。

例えば、相続の対象が預貯金の場合は、銀行名、支店名、口座の種類、口座番号、口座名義人など、建物の場合は、所在地、家屋番号、種類、構造、床面積などの情報を詳細に記載する必要があります。

このように、相続財産が特定でき、各種相続手続きの際に金融機関や関係機関が理解しやすい内容、つまりは第三者目線で特定できる内容にする必要があります。

次に、当事者各人の署名と押印が必要である点です。特に各種手続きの際に提出する場合は、全員の印鑑証明書の添付と、実印による押印が必要になります。

民法で定められているわけではないのですが、認印での手続きは認められていませんので、事前に印鑑登録を済ませておくと困らないでしょう。

書式についての決まりはない

いざ遺産分割協議書を作成するときに気になるのが、書式についてではないでしょうか?

しかし、書式については法律の定めはありません。また、手書きでもPC入力でも良いとされています。インターネット上でたくさんのテンプレートを見ることができますので、使いやすいものを選んで活用するのが良いでしょう。

さらに、相続人全員で作成する必要はなく、誰か一人が作成したものに他の相続人の署名、押印があれば事足ります。ただし、ここでも注意点があります。

まず、内容の訂正についてです。訂正の際は訂正箇所の欄外に全員の押印が必要になるなど、面倒を強いられるため、内容の確認は丁寧に行いましょう。もし、訂正が必要な場合は、作成し直してしまったほうが手間も省ける場合があります。

次に、必要記載事項についてです。こちらも形式的な決まりなどは特にはありませんが、被相続人の情報(氏名、住所、生年月日、死亡日など)、財産の内容、財産の分配方法、日付など必ず記載しなければならない事項があるので記載漏れがないように注意しましょう。

遺産分割協議書の作成は弁護士へ依頼も検討しよう

これまで作成にあたっての注意点などについて述べてきましたが、「自分で作成するのは不安だ」と感じた方もいるのではないでしょうか。各種関係機関に提出しても問題のない遺産分割協議書を作成するのは簡単ではありません。

また、他の相続人と疎遠である、遠方に住んでいるなどの理由で書面のやり取りに手間がかかるといったケースも珍しくはありません。このような複雑な事情がある方、少しでも不安に思っている方は、弁護士に依頼してみることをおすすめします。弁護士に依頼することで、不測のトラブルが発生した場合の交渉やサポートも可能です。

当事務所においても、遺産分割協議書の作成サポートを受け付けております。作成についてお困りの方、少しでも不安がある方はお気軽にお電話にてご相談ください。初回であれば30分の無料相談も受け付けております。

初回60分相談無料

相続トラブル・手続きのお悩みはお任せください

要予約

無料相談予約はこちら

0120-359-138
平日9:00〜18:00 ※ご予約で夜間土日祝対応可能
24時間受付中/メール相談予約フォームはこちら
※土日祝除く / 夜間・土日祝相談対応可能(要予約) / 相続相談に限る。