どういった場合に遺言書は無効になるのか
遺言書を作成する際、どうしても心配になってしまうのが、「法的に無効とされてしまわないか…」ではないでしょうか?
そもそも遺言書というのは、自身の意思表示はもちろんなのですが、将来、自身の相続分をめぐって相続人同士で争いが起きるのを防止する意味合いで作成する方が多いですし、それはまさに自身の死後の心配事を減らすことに繋がります。
しかし、法的に無効とされればせっかく作成した遺言書の意味がなくなってしまいます。そこで今回は、どういった場合に遺言書が無効になってしまうのかを遺言書の失敗例をパターン別にみていきましょう。
パターン1:日付の記載がない
遺言書に記名捺印をするのは、多くの方が理解し、注視しているのですが、日付の記載を忘れてしまう方が多々いらっしゃいます。遺言書は日付がないだけで法的効力を失ってしまいます。
また、「2020年1月吉日」といったように、日付が曖昧な表記になってしまうのもアウトです。一方で、「2020年80歳の誕生日」といったように、日付が確定できる場合は有効となります。
しかし、こういった捻った書き方をするのではなく、しっかりと日付の記載をするようにしてください。
ここで少し蛇足ですが、遺言書の日付にまつわる豆知識を1つ。遺言書が複数発見された場合、日付のもっとも新しい遺言書が優先されます。少し考えればわかりますが、遺言書というのは被相続人の最後の意思表示であるため、亡くなる日により近い日時が優先されることになります。
パターン2:パソコンで打ち込んでしまう
最近では、ご高齢の方であっても、パソコンはもちろん、スマートフォンも使用できる方が増えてきています。それゆえ、中には遺言書をパソコンで作成してしまう方がいらっしゃいます。
しかし、パソコンで打ち込まれた遺言書は無効となります。近年の法改正によって、財産目録についてはパソコンによる打ち込みが認められましたが、遺言書の本文や日付、記名部分に関しては自筆されていなければ無効とされてしまいます。
ただし、上記は遺言書の作成方式が自筆証書遺言であった場合です。公証役場で作成する公正証書遺言については、公証役場にて公証人が打ち込んで作成してくれるため、すべて自筆である必要はありません。
パターン3:加筆・修正の仕方を間違えている
遺言書というのは、加筆・修正のルールが細かく規定されています。よく修正する際に、単に二重線を引いてしまったり、修正ペンや修正テープを使用したりする方がいらっしゃいますが、こういった修正が行われた遺言書はすべて無効となります。
この加筆・修正に関しては厳格なルールが定められていることからも、間違えてしまったのであれば、いっそのこと書き直してしまったほうが、その後の不安がなくなります。
加筆・修正した遺言書の見た目は決してよいものではありません。自身の最後の意思表示でもあることから、見た目はもちろん、丁寧に遺言書作成していきましょう。
パターン4:遺言の内容を特定できない
遺言書は、自らの意思を相続人に伝える目的で作成されるものです。
しかし、その内容部分については、第三者目線でもしっかり内容を特定できるものでなければなりません。
例えば、預貯金であれば、「タンスに保管された通帳全額」といった表記では、相続人はわかるかもしれませんが、第三者目線では特定できるものではありません。預貯金であれば、「○○銀行○○支店、預金種別、口座番号、口座名義」といった具合に記載しなければなりません。
不動産の場合も、単に「別荘」や「自宅」といった表記ではなく、不動産の登記事項証明書に記載されているように「所在、地番、地目、地積、家屋番号、床面積」など、誰が見ても特定できるように記載しましょう。
なぜここまで明確な記載が必要かというと、相続人は遺言書をもとに名義変更の手続きをします。預貯金であれば金融機関に、不動産であれば法務局に遺言書の写しを提出するのです。
しかし、上記のような特定できない曖昧な記載になっていれば、受け付けてもらえません。遺産の特定ができないものは無効になりますので遺言書作成の際は注意しましょう。
遺言書の作成が不安な方は
このように、遺言書はちょっとしたことで無効になってしまいます。せっかく作成した遺言書が、自身の死後に無効にされてしまっては報われません。
失敗しないためにも、上記のパターンを振り返りながら遺言書を作成していただければ幸いに存じます。
しかし、もしどうしても、遺言書作成が不安だという方は、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を検討するのも選択肢の1つです。その他にも、自身の作成した遺言書を専門家にチェックしてもらうのも良いでしょう。
もちろん当事務所においても、ご希望であれば遺言書の法的不備がないかをチェックさせていただきますので、お気軽にご相談ください。