遺言執行者とは?選任方法と役割について

代表弁護士 多湖 翔 (たこ つばさ)
多湖総合法律事務所
所属 / 神奈川県弁護士会 (登録番号46487)

今回は、遺言執行者について詳しくみていきます。

遺言執行者と聞くと、執行という言葉も相まって、あまり良い印象を持たない方が多いかもしれません。遺言執行者というのは、被相続人が作成していた遺言書の内容どおりに財産がいきわたるよう、そのために必要なすべての手続きを行う権限を与えられた者のことです。

つまりは、遺言の内容を実現するにあたって、強い権限を持って手続きを行える立場にあるため、遺言の内容や遺言執行者の存在に納得できていない相続人からすれば、煩わしい存在となり得ます。

とはいえ、遺言執行者は被相続人の意思を尊重し、手続きを行っているだけです。相続人の立場であるなら、可能な限り積極的に協力すべき存在と言えるでしょう。

遺言執行者の選任方法

遺言執行者の選任は、主に以下の3つの方法になります。

1、遺言書による指定

遺言書の作成者が、遺言書の中で遺言執行者を指定することは可能です。

遺言執行者として指定された者は、必ず選任されなければならないわけではなく、断ることも可能となっています。もし、断られる事態を避けたいのであれば、生前から遺言執行者になってくれるようお願いしておく必要があります。

とはいえ、生前は承諾していても、後になって断られる可能性ももちろんあります。なお、遺言執行者を指名しても、強制力は特にありません。

2、家庭裁判所による指定

相続人間にて、遺言執行者の存在が必要だと感じた場合、家庭裁判所に申立てることで遺言執行者を選任してもらうことは可能となっています。選任する相手については、申立ての段階で候補者を立てることも可能ですし、候補者を立てなければ家庭裁判所が適任者を選任してくれます。

この場合、その裁判所の管轄となる弁護士会から選抜された弁護士が選任されることになりますので、安心して任せることが出来ます。

3、第三者による指定

実例としては少数ですが、第三者から遺言執行者を選任させることもできます。そもそも遺言書というのは、作成から数年経っていることもあり、遺言書を作成したときと、相続開始後では、財産状況だけでなく、被相続人の身辺も変わっているケースはよくあります。

そういった場合は、今現在の状況下でもっとも適した相手を遺言執行者として指定することも可能です。

遺言執行者の役割

遺言執行者の役割は、遺言の内容どおりに財産などを移転させることです。民法の規定によると、遺言執行者は、相続財産の管理の他、遺言執行のために必要であれば、一切の行為を行える権限、そして義務を持っているとされています。

そのため、遺言執行者以外が勝手に行った相続財産の処分行為(例えば、相続人の1人が不動産を処分してしまったなど)については、すべて後からでも取り消すことが可能となっています。

そして、遺言執行者はこの役割を遂行するために、まずはすべての相続人、受遺者(遺言書に記載されている遺贈を受ける者のこと)に、自身が遺言執行者として選任された事実を通知します。

その後は、遺言書の記載どおりの相続財産が存在しているかを調査します。それと同時進行で、相続人についても戸籍謄本を取り寄せるなどして調査し、相続人を確定させます。

そして、すべての相続財産と相続人の調査が完了次第、遺言書どおりに分配していくことになります。無事に遺言書どおりに分配できたところで、遺言執行者の役割は終了します。

なお、遺言執行者に与えられた権限は、あくまでも遺言の内容に限ります。遺言書に記載された以外の相続財産が発見された場合は、相続人による遺産分割協議でその行方を決めることになっています。

遺言執行者には弁護士を指定しましょう

上記からもわかるように、遺言執行を行うには、どうしても法的な知識が必要となってきます。一般の方には遺言執行を行うには負担があまりに大きすぎます。自身の死後のことはこの方に任せたい、といった希望を持つのは良いことですし、素晴らしい信頼関係です。

しかし、頼まれた側の負担も考えなければなりません。一度お願いをして断られたのであれば、あまり無理強いはしないようにしましょう。もし、遺言執行者の選任について検討されているのであれば、弁護士といった法律の専門家に依頼することをお勧めします。

遺言執行業務は当事務所でも受け付けています

遺言執行者の選任についてお悩みであれば、ぜひ一度当事務所にお越しください。

当事務所では、遺言執行のご依頼を受ける際、どういった思いでこの遺言を残すのかなど、ご依頼者様のお気持ちをしっかり確認させていただいた上でお受けするようにしています。

なぜなら、遺言執行者として職務を行うことは弁護士からすればそれほど難しいことではありません。ご依頼者様の意思を引き継ぎ、遺言書に込められた思いを理解し、より確実な遺言執行のために、詳しいご事情をお聞かせ願います。

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