【弁護士による判例解説】「配偶者や子ども名義で預金を貯めていた場合、配偶者や子ども名義の預金(いわゆる名義預金は)遺産分割の対象に含まれるか否か。」
-
【参考判決】
- 東京地裁令和3年10月27日判決
- 最高裁昭和48年3月27日判決
- 最高裁昭和52年8月9日判決
- 最高裁平成15年2月21日判決
税金対策など色々な理由から、本当は被相続人の資産でも、配偶者や子ども名義で預金をすることがあります。
相続税の申告においては「名義預金(他人の名義で保有している預金)」について、被相続人の相続財産として遺産分割の対象となるかが争われます。
その判断基準と実際の取り扱いについて解説します。
1 預金の帰属に関する最高裁の考え方
預金の帰属に関する最高裁の考え方は、基本的に預入行為者ではなく、出捐者を預金者としています(最高裁昭和48年3月27日判決、最高裁昭和52年8月9日判決、最高裁平成15年2月21日判決)。
預入行為者とは、銀行にお金を預けに行った人、出捐者とは、銀行にお金を預け入れた際にそのお金の負担をした人をいいます。
口座内の預金について誰の金銭が原資となっているか、通帳や届出印の管理者や口座の使用者が誰であったかなどが考慮されますが、誰の金銭が原資となっているかが最も重要で、それをどのように立証するかが非常に大事です。
2 名義預金(他人の名義で保有している預金)が、被相続人の相続財産として遺産分割の対象となるか(東京地裁令和3年10月27日判決)。
(1)事案の概要
夫Aが亡くなった事案で、相続人は配偶者Xとその母親Yでした。
YはAが亡くなる前、AやXに無断で預金の払戻しを行っていたところ、相続人であるXがYに対して、Aの預金を勝手に引き出したことについて、Xの法定相続分に従って、不当利得返還請求訴訟を提起した事案です。
YはこれらのA名義の預金は、他人名義で保有しているYやAが代表取締役を務めていた会社の資産であって、Aの資産ではないと主張しました。
(2)裁判所の判断
東京地方裁判所はYが引き出したA名義の預金4つについて、いずれもAの資産ではないとして、これらの預貯金に関する不当利得返還請求についてはいずれも請求を棄却しました。
理由について、被相続人の年収等から口座内の預貯金を被相続人が用意できたかや預金口座内にどのような性質の金銭が振り込まれているか(例えば会社の預かり金や売上げなど)、預金口座内の引き落としや引き出しがどのような使途に使われていたか、通帳を誰が管理していたかなどを認定した上でAに属するものではないと判断しています。
3 名義預金について
特に親子や配偶者ですとつい預金口座を貸してもらっている感覚で、自分のお金を子どもや配偶者の口座に貯めてしまうことがあります。
もともと贈与するつもりできちんと贈与契約書等もある場合であれば、特に問題は生じませんが、一時貯めておいたり、口座を貸してもらっているつもりで預金をしていると、その取り決めというのは当事者同士でしかわかりませんから、相続が発生した場合に他の相続人が登場すると、もめる原因になってしまいます。
また、税務署が相続人名義の預金を被相続人の預金と認定して追徴課税をすることもあります。多少面倒な場合でも、預金口座の名義人と、預金口座内に入っているお金が誰のものであるかについては、一致させておいた方が何かとトラブルが少なく済みます。
上述の東京地裁の判例では名義人と出捐者が異なることについて認められていますが、預金名義が実際には誰のものであるかについては、立証が困難なことが多く、実際の出捐者が敗訴するケースも多々あるからです。
遺産分割等で、相続人間で無用な争いが生じないように、預金についてはきっちりと整理しておくことをお勧めします。
以上