【判例解説】「内縁配偶者の一方が死亡した場合の他方配偶者の権利」最高裁判所平成12年3月10日

弁護士 根岸 小百合 (ねぎし さゆり)
多湖総合法律事務所 代表弁護士
所属 / 神奈川県弁護士会 (登録番号44683)
保有資格 / 弁護士

内縁の夫が死亡した場合、内縁の妻は相続人となることができるでしょうか。
この点について、内縁配偶者には相続権は認められないと考えられています。

相続人が不存在の場合に、内縁配偶者について特別縁故者として財産の分与が認められたり(民法958条の3)、居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合に、賃借人の内縁配偶者が賃借人の権利義務を承継(居住用建物賃貸借の承継。借地借家法36条1項)したりすることはありますが、これらは相続人が不存在の場合に限ってのものです。

また、配偶者居住権(民法1028条)にいう「配偶者」は法律上の配偶者をいうため、内縁配偶者は配偶者居住権を取得することもできません。

一方、内縁関係の生前解消の場合、離婚の際の財産分与の規定の類推適用が認められています。

そこで、内縁関係の死亡による解消の場合にも、この財産分与の規定を類推適用して、残された他方配偶者に財産を分与することが認められないでしょうか。
この点について、判例を踏まえてご説明いたします。

1 最高裁判所平成12年3月10日決定

事案の概要

Aは昭和22年にBと婚姻し、Bとの間にY1、Y2の二子をもうけました。一方、Xは夫と死別後、勤務先でAと知り合い、親密な関係となりました。Xは、昭和46年ころから平成9年にAが死亡するまで、Aから毎月一定額の生活費の援助等を受けており、Xは、昭和60年ころからAが死亡するまで、入退院を繰り返していたAの看病や身のまわりの世話をしていました。また、昭和62年にBが死亡した後は、Aは、Y1がいる自宅で過ごす時間よりもX方で過ごす時間の方が長くなっていました。

Aが死亡し、Aの遺産約1億8500万円は、Y1、Y2が相続したところ、Xは、Y1とY2に対して、財産分与として各1000万円の支払いを求める家事調停を申し立て、その後、審判手続に移行しました。

第1審(高松家裁)は、AとXの関係を内縁と認定した上で、財産分与規定を類推適用し、Y1、Y2に各500万円の支払を命じました。これに対してY側が抗告し、原審(高松高裁)は財産分与の適用を否定して、Xの申立を却下したため、Xが抗告しました。

裁判所の判断

内縁夫婦について、死亡による内縁解消のときに、遺産に財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので法の予定しないところであるとして、内縁夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、離婚に伴う財産分与に関する民法768条の規定を類推適用することはできないと判示しました。

2 考察

内縁関係の死亡による解消の場合に、財産分与規定の類推適用を認めるか否かについては、学説裁判例が分かれていましたが、この点に関して、最高裁は、類推適用を否定することを明らかにしました。

これにより、死亡した内縁配偶者の財産はその相続人に承継され、残された内縁配偶者には何の財産も残されないことになります。

もっとも、裁判例の中には、内縁の夫婦が家業を共同経営し、その収益から、夫婦の共同生活のための財産として不動産を購入した場合には、登記簿上の名義が内縁の夫であっても当該夫の特有財産とする旨の特段の合意がない限り共有財産となるとし、生存内縁配偶者である妻に2分の1の共有持分権を認めたものや、双方の収入を合わせて生計を維持しており、双方の収入が混在していた預金について、内縁の夫婦の準共有であり、生存内縁配偶者に預金の2分の1の権利を認めたもの等があり、共有関係が認められる場合には、その範囲では、生存内縁配偶者について一定の経済的保護が図られることになります。

しかし、生存内縁配偶者が専業主婦として家事育児に専念していた場合や、生存内縁配偶者が高齢、病弱などのため財産形成に寄与したといえないような場合などは、共有法理によっては保護されない可能性があります。

したがって、内縁夫婦間において、一方の死亡後の他方の生活の安定のためには、あらかじめ、きちんと遺言書を作成して、その中で他方内縁配偶者に財産を遺贈することなどを定めておくことがとても大事です。

遺言書の作成についてはもちろん、上記の通り、内縁配偶者であっても経済的保障が受けられる場合もありますので、お悩みの際は、弁護士にご相談いただければと思います。

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