必ず知っておきたい相続のスケジュールについて
相続というのは、人が亡くなることによって発生します。大切な方が亡くなった後というのは、なんにも手につかないという方も多いのではないでしょうか?
しかし、相続手続きの中には、「相続開始から○ヶ月」といったように、期間が定められているものもあるため、いつまでも何もしないというわけにはいきません。
残酷なようですが、期間経過によって手遅れになってしまうケースも現実にはありますので、相続のスケジュールについては知っておくようにしましょう。
以下でご説明する相続のスケジュールを見ながら、慌てず落ち着いて手続きを進めてもらえれば幸いに存じます。
相続開始後すぐにすべきこと
冒頭でも触れていますが、相続開始とは人が亡くなることを指します。人が亡くなった際は、まず死亡届を提出する必要があります。
提出先は、被相続人の住所、本籍地、死亡地、もしくは、届け出をする方の住所地、このいずれかの市区町村役場となっています。
死亡届の提出ついては、相続人である必要はなく、親族や近親者であれば問題ありません。また、地域によっては、葬儀社が代わりに死亡届を出してくれることもあります。
なお、葬儀費用というのは、一時的に相続人の誰かが立て替えるケースもありますが、後に相続財産の中から補填することができます。
また、相続税申告の際、葬儀費用はすべて控除の対象になっているため、かかった費用(お布施やお車代、手伝ってもらった方への謝礼など)については領収書やメモなど、どんな形式でも良いので、書面にして残しておくようにしましょう。
相続開始から1~2ヵ月以内にすべきこと
相続開始から1~2ヶ月以内には、以下3つのことを同時進行で行う必要があります。
1、遺言書の捜索・検認
まずは被相続人が生前に遺言書を作成していなかったか捜索しましょう。
一般的には自宅に保管しているケースが多いため、被相続人の生活圏から確認していきます。どうしても見つからなかった場合であっても、他の場所に保管されている可能性が十分あります。
たとえば、公正証書遺言の場合はお近くの公証役場、自筆証書遺言であっても、近年では法務局で保管してもらえる制度が出来ましたので、お近くの法務局にも確認してみましょう。
遺言書が見つかった場合、それが公正証書以外であれば検認手続きを行う必要があります。遺言書の検認は、家庭裁判所にて行う手続きであり、遺言書の存在を明確にするために行います。
注意したいのが、複製や改ざんを阻止する意味で、遺言書は開封前の状態で手続きを行わなければならない点です。意図的に開封した場合は、罰金規定もあるので気を付けましょう。
なお、検認というのは遺産分割についての話し合いや、遺言書の中身について確認するための手続きではありません。ただ単に、「被相続人が作成した遺言書があります」、というだけの手続きです。しかし、法律上、必ず行われなければならない手続となります。
2、相続人の調査
一見すると、相続人の調査なんて本当に必要?と感じる方も多いかもしれませんが、この調査は必ず行わなければなりません。
なぜなら、親族の誰も知らなかった相続人がいる可能性は、被相続人の戸籍をすべて確認してみないことにはわかりません。
たとえば、現在の配偶者とは別の方との婚姻・離婚があった場合、その際に子どもがいたとなれば、当然ながらその子どもは被相続人の相続人となります。
過去の離婚歴というのは、あまり積極的に話したい内容ではないため、配偶者はもちろん、親族の誰もが知らなかったというケースは実際にあります。
遺産分割というのは、原則的に相続人全員参加で行わなければならないため、相続人の調査は必須となります。また、被相続人の預金の解約や、不動産の名義変更など、各種手続きにおいても被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になるため、取得した戸籍謄本は必ず手元に残しておくようにしてください。
3、相続財産の調査
遺産や相続財産と呼ばれる財産の中には、現金や預金の他、不動産や株など、プラスの財産を思い浮かべる方がほとんどでしょうが、現実は借金といった負の財産も相続の対象になります。
よって、負の財産の相続を回避する意味でも、相続財産の調査は必ず行ってください。というのも、以下でご説明する相続放棄という手続きが間に合わなくなってしまう危険があるのです。
具体的な調査としては、やはり被相続人の生活圏が重要です。自宅はもちろん、お近くの銀行など、被相続人の生活圏をくまなく調査してみましょう。また、近年ではパソコンにて財産管理されているケースもありますのでチェックしてみましょう。
その他は、やはり郵便物が重要です。もし、借金を抱えているのであれば、返済がストップしている状態です。債権者から催促の電話、繋がらなければ郵便物による請求がくるはずです。
また、被相続人のお財布に消費者金融などのカードがないか探してみるのも良い方法の1つです。もしカードが見つかれば、連絡をして残債があるかどうか確認してみましょう。
相続開始から3ヵ月以内にすべきこと
相続手続きの中でも、法的に期間が定められている手続きの1つが「相続放棄と限定承認」です。相続放棄とは、マイナスの財産が超過している場合など、相続財産を放棄したい場合に行われます。
注意すべき点は、借金だけを放棄できるわけではなく、その他の財産についてもすべて放棄(最初から相続人でなかった扱い)になる点です。
一方で、限定承認という手続きは、プラスの財産の範囲内に限り、マイナスの財産も相続するという手続きになります。この限定承認は、相続人全員で行う必要のある手続きです。
この2つの手続きは、いずれも相続開始から(自身に相続分があると知った時から)3ヵ月以内と定められています。この期間を経過してしまうと、特別な事情がない限りは相続放棄ができなくなります。相続放棄の利用の可否の根拠となり得る相続財産の調査は、早い段階で終わらせておきましょう。
相続開始から4ヶ月以内にすべきこと
こちらは必要な方とそうでない方がいらっしゃいますが、相続開始から4ヶ月以内に「準確定申告」という手続きを行わなければなりません。こちらは、普段から確定申告をしていた方が対象となります。そうでない方の場合、こちらの手続きを行う必要はありません。
そもそも確定申告というのは、その年の1月1日~12月31日までの収入についての申告と納税を、3月半ばまでに行うと手続きですが、被相続人の場合、準確定申告といって、その年の亡くなるまでの期間に得た収入についての申告と納税を、亡くなってから4ヶ月以内に行わなければならないと定められているのです。
準確定申告をしないでいると、追加徴税を課される危険もあるため、必ず行うようにしましょう。
相続開始から10ヶ月以内にすべきこと
こちらについても必要な方とそうでない方がいらっしゃいますが、相続開始から10ヶ月以内に「相続税の申告と納税」を行わなければなりません。
そのためにも、まずは相続税の対象になるかどうかを判断するために、相続財産の調査、自身の相続分についての計算が必須となります。
具体的には、遺産分割協議を経て持ち分を確定させてから申告・納税といった形が理想的ではありますが、話し合いが10ヶ月以内に解決しない場合も現実にはあります。
その場合は、法定相続分にて計算し、優先して相続税の申告・納税をしてください。被相続人の遺言書が見つからなかった場合など、相続分で揉めるケースは現実に多々見受けられますが、相続税の申告と納税は先に行いましょう。
相続税の申告と納税を10ヶ月以内に行わない場合は、追加徴税を課される危険もあるため、忘れないように注意してください。