遺産分割後の名義変更手続きについて
遺産分割協議がすべて終了したら、次は自身が相続した財産の名義変更を行わなければなりません。
被相続人の名義をそのままにしておくと、いくつもの不都合が生じます。例えば、不動産であれば、売却手続きを取ることができません。
登記簿上の名義変更をしていないということは、他者に自身の権利を証明できないということ。かなり悪質な例ではありますが、他の相続人が自身の相続分ではないにも関わらず、勝手に登記申請を終えてしまうなど、名義変更をしないまま放っておけば後にトラブルを引き起こす危険があります。
こうした問題を回避するためにも、遺産分割終了後は、速やかに名義変更手続きを行うようにしてください。
法定相続情報証明制度を利用しよう
各種機関での名義変更手続きをする前に、近年制度化された「法定相続情報証明制度」についてご説明します。こちらの制度は平成29年から開始されました。
どういった制度かというと、相続人が相続関係を説明できる戸籍謄本をすべて取得し、法務局指定の書式にて法定相続情報一覧図(相続関係図のこと)を作成し法務局に提出すると、相続関係を証明する認証文付きの一覧図を発行してもらえます。
この一覧図さえあれば、法務局での相続登記はもちろん、金融機関での名義変更手続きもスムーズに進められます。というのも、各種手続きの際は戸籍謄本の添付が必須となっていて、相続関係次第では大量の戸籍謄本を持ち込まなければなりません。
しかし、法定相続情報証明制度を利用することで、一覧図一枚で済みます。また、一度申請することで再発行もできますし、手数料も無料となっています。戸籍謄本をすべて取得するのであれば、こちらの制度を利用して煩わしい戸籍謄本のやり取りから解放されましょう。
名義変更手続きに必要となるもの
名義変更手続きをする場合、被相続人が残した遺言書により遺産分割をしたのであれば、遺言書が必要になります。
さらに、遺言書が自筆証書遺言か秘密証書遺言であった場合、裁判所が発行した検認調書が必要になるため、必ず検認手続きを終えていなければなりません。
ただし、公正証書遺言であった場合は、そのまま利用可能となっています。
一方で、遺産分割協議による遺産分割をしたのであれば、遺産分割協議書が必要になります。こちらは、遺産分割協議書と記載してあればなんでも良いわけではなく、必ず相続人全員の印鑑証明書を添付しなければならない上に、各相続人の押印はすべて印鑑証明書と同一の印鑑を使用する必要があります。
その他、各種手続きによって必要書類が若干異なってきますが、遺言書、もしくは遺産分割協議書、相続関係が把握できる資料(すべての戸籍謄本か法定相続情報証明書)については必要になるので準備しておかなければなりません。
預貯金の名義変更について
相続財産の中でも、必ずといって良いほどあるのが預貯金です。預貯金の名義変更についてですが、近年の法改正で若干運用が異なっている点に注意です。というのも、相続人であれば法定相続分の預貯金については、名義変更手続き(相続手続き)を経ることなく引き出すことが可能となりました。
とはいえ、上記の書類については最終的な名義変更のためには必要になってきますし、金融機関によっては、追加で書類提出を求めてくることもあります。
いずれにしても、金融機関の名義変更手続きというのは、各所で若干異なっているため、まずは対象となっている金融機関に名義変更手続きに際し、必要書類を事前に確認してみましょう。
そして、来所する際は一度で済むように必要書類をしっかりと集めてから行くようにしてください。
不動産の名義変更について
不動産の名義変更は、法定相続情報証明制度と同様、法務局にて行います。
必要となる書類は、自作した登記申請書(インターネットでひな形の入手は可能)、法定相続情報一覧図、そして遺言書、もしくは遺産分割協議書(印鑑証明書はもちろん必須)、そして申請者の住民票が必要となっています。
手数料としては、固定資産税評価額の0.4%となっているため、この手数料の算出のために、固定資産税の納付書、もしくは固定資産税課税証明書を取得しましょう。その他の書類を求められるケースは稀ではありますが、登記官に指示された書類があればその都度取得してください。
なお、不動産の名義変更手続きに期間制限はありません。いつどのタイミングで行っても問題はなく、もちろん罰則規定などもありません。もし、生涯ずっと名義変更しなくても問題ありません。
しかし、自身が死亡してしまい、次の世代に所有権が相続された際、名義変更手続きが非常に煩雑になってしまいます。次の世代の負担を軽減させる意味でも、不動産の名義変更は自身の代で行うようにしましょう。