誰がどれだけ相続できる?法定相続分とは

代表弁護士 多湖 翔 (たこ つばさ)
多湖総合法律事務所
所属 / 神奈川県弁護士会 (登録番号46487)

相続問題において多くの方が気にしているのが、「私はどれだけの遺産を相続できるのか?」という点ではないでしょうか?実際に相続に関する相談を受けていても、こうした類の疑問を持っている方は本当にたくさんいらっしゃいます。

実は、法律の世界には「法定相続分」といって、被相続人との関係性によって、どれだけ相続できるのか、その取り分が決められています。

ただし、法定相続分というのは、必ずしも決まっているものではなく、遺言書や寄与分、特別受益など、様々な問題によって変わります。

とはいえ、常にその基本にあるのは法定相続分になるため、今回はこの法定相続分について、ケース別に、各自の相続分がどの程度になるかについて詳しくみていきましょう。

相続の優先順位について

法定相続分について見ていく前に、まずは相続の優先順位について理解しておきましょう。

相続において、必ず相続人になるのが被相続人の配偶者です。配偶者はどのような場合も相続人になるため優先順位はありません。

したがって、優先順位が影響してくるのは、配偶者以外の相続人です。その中でもっとも上位の優先順位が、被相続人の子どもになります。子どもが複数人いれば、その全員が相続人となります。すでに離婚していた相手との間に生まれた子であっても、変わらず相続人になりますので注意が必要です。

次に優先順位が高いのは被相続人の両親となります。そしてその次が、兄弟姉妹といった具合です。先順位の相続人がいる場合、自身に相続分は発生しません。

例えば、被相続人に配偶者がいて、子どもがいない場合は、配偶者と両親が相続人となります。仮に両親がどちらもすでに亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人です。

相続人が配偶者と子どもになるケース

相続人が配偶者と子どもになるケースの法定相続分は、配偶者が2分の1を相続、子どもが残りの2分の1を人数で割って相続することになります。

例えば、子どもが4人いるのであれば、配偶者は2分の1、子どもはそれぞれが8分の1ずつ、というのが法定相続分となります。

相続人が配偶者と両親になるケース

相続人が配偶者と両親になるケースの法定相続分は、配偶者が3分の2を相続し、両親が残りの3分の1を均等に相続することになります。

例えば、遺産が1500万円あった場合は、配偶者が1000万、被相続人の父が250万、母が250万といった具合です。

なお、ここでいう両親というのは、法律の世界では直系尊属といい、自身の直系の上世代を指します。したがって、被相続人の祖父母も直系尊属です。

稀な例ですが、両親がすでにどちらも不在で祖父母が生存している場合は、祖父母が相続人となります。

相続人が配偶者と兄弟姉妹になるケース

相続人が配偶者と兄弟姉妹になるケースの法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を人数で割って相続することになります。

例えば、遺産が2000万円あり、配偶者と被相続人の兄と妹がいた場合、配偶者は1500万円、兄が250万円、妹が150万円といった法定相続分となります。配偶者と兄弟姉妹が相続人という場合、普段から接している機会が多ければ良いのですが、もともと疎遠であるケースも珍しくなく、非常に揉めやすい傾向にあります。

配偶者がすでに亡くなっているケース

では、必ず相続人になる配偶者がすでに亡くなっている、もしくはいなかった場合、法定相続分はどうなるのでしょうか?この場合、先順位の相続人がすべてを相続することになっています。

例えば、子どもがいるのであればその子どもが、子どもがいなければ両親(直系尊属)、両親もいなければ兄弟姉妹、といった具合です。もちろん人数で割った分が各々の法定相続分となります。

法定相続分は絶対のルールではない

冒頭でも触れていますが、法定相続分というのは絶対のルールではありません。法律上、このように相続するのが揉め事も少なくなり好ましい、といった程度でしかありません。

では、どういった場合に法定相続分どおりにならないのか?というと、まずは遺言書があった場合です。

遺言書というのは、法定相続分よりも強い効力を持っています。被相続人の最後の意思となりますので、優先されるのは決しておかしなことではありません。

しかし、遺言書だからといって、相続人のすべての相続分を失わせることはできません。相続人には「遺留分」といって、最低限相続できる権利が認められています。もしこういった、遺留分の侵害があった場合、「遺留分侵害額請求」という手続きにて、取り戻しを計ることが可能となっています。

その他にも様々なケースがある

これまで法定相続分のいくつかのケースについて見てきましたが、実務上はその他にも様々なパターンが存在します。

例えば、一部の相続人が相続分を他の相続分に譲渡したり、相続放棄や限定承認したりといった場合もあります。また、「代襲相続」といって、相続人が亡くなっていた場合であっても、その子どもが相続できるケースもあります。

他にも、相続人が配偶者と子どもであった場合、その子どもがすでに亡くなっていたとします。もしその子どもに子ども(被相続人からみれば孫)がいれば、代襲相続が発生し、その子どもが相続権を有することになります。

法定相続分でお悩みの方は当事務所にご相談を

上記からもわかる通り、法定相続分というのは絶対のルールではないため、常に争いが起こる可能性があります。遺言書、遺留分、代襲相続、といった具合に、相続分というのは簡単な話ではありません。

自身の法定相続分に関する問題でお悩みの方は、無理やり解決させるのではなく、まずは一度当事務所にご相談ください。本来の法定相続分についてはもちろん、権利侵害があった場合、相続関係が複雑な場合であっても、当事務所がしっかりサポートさせていただきます。

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